大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜地方裁判所 昭和50年(わ)348号 判決 1976年3月30日

本籍

藤沢市鵠沼松が岡二丁目六六七三番地

住居

同市鵠沼松が岡二丁目一八番一〇号

不動産貸付業

片岡絜

明治三三年一〇月四日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官橋本正勝出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一五、〇〇〇、〇〇〇円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

但し、本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、藤沢市鵠沼松が岡二丁目一八番一〇号に居住し、片岡不動産の名称で不動産貸付業等などを行つていたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、収入の一部を除外する等の方法により所得税を秘匿したうえ

第一  昭和四六年分の所得金額は、一七三、三八六、二三二円で、これに対する所得税額が三一、五九五、三〇〇円であつたのに、昭和四七年三月一四日、同市朝日町一丁目一一番地所在藤沢税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額は一五一、五九三、九一七円で、これに対する所得税額が一八、四九八、九〇〇円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右申告税額との差額一三、〇九六、四〇〇円の所得税をほ脱し

第二  昭和四七年分の所得金額は、三四三、四九五、三八六円で、これに対する所得税額が二二七、七九二、一〇〇円であるのに、昭和四八年三月一二日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額は三五、九三〇、〇九二円で、これに対する所得税額が四、九六四、四〇〇円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて、不正の行為により、右申告税額との差額二二二、八二七、七〇〇円の所得税をほ脱し

第三  昭和四八年の所得金額は、五七四、九八〇、五七七円で、これに対する所得税額が三三五、九七二、〇〇〇円であるのに、昭和四九年三月九日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対し、右年分の所得金額は一五六、五五八、三七一円で、これに対する所得税額が二七、九九七、四〇〇円である旨虚偽の確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右申告税額との差額三〇七、九七四、六〇〇円の所得税をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  被告人作成の各上申書

一  片岡正、兼坂忠夫の検察官に対する各供述調書

一  山本健二、片岡正、兼坂忠夫、上村寛司、村上寛治、岸本善吉、尾崎文雄、浅野寛、小林恒太郎、渡部直一、米本幸憲、木村徳松の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  片岡正作成の上申書

一  兼坂忠夫、片岡正共同作成の上申書

一  大蔵事務官作成の各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の各電話聴取書

一  有限会社日宝紙器代表取締役安井健翁作成の上申書

一  久星商事株式会社代表取締役小高正直作成の上申書

一  大福証券株式会社経理部付部長橋本保三作成の上申書

一  株式会社第一勧業銀行藤沢支店長脇本重一作成の証明書

一  株式取引関係観客勘定元帳等一綴

一  商品取引関係客方元帳一綴

一  押収してある昭和四八年度分所得税の確定申告書一通(昭和五〇年押第三四八号の一)、昭和四七年度分所得税の確定申告書一通(同号の二)、昭和四六年度分所得税の確定申告書一通(同号の三)、昭和四八年度分所得税青色申告決算書一冊(同号の四)、昭和四七年度分所得税青色申告決算書一冊(同号の五)、昭和四六年度分所得税青色申告決算書一冊(同号の六)、手帳四冊(同号の七ないし一〇)、月別収入明細帳一冊(同号の一一)、株式元帳一冊(同号の一二)、簿外収入一覧表(同号の一三)

(法令の適用)

被告人の判示所為は、いずれも所得税法第二三八条第一項に該当するから、情状により懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は、刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法第四七条本文、第一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で、罰金刑については同法第四八条第二項により各罪につき定められた罰金の合算額の範囲内で、被告人を懲役一年及び罰金一五、〇〇〇、〇〇〇円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法第一八条に則り、金一五、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、同法第二五条第一項を適用し、本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 青山将通)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例